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2021.7.26

【インタビュー特集】大阪・十三 次世代を生きる寿司業界の新たな一歩

大阪市淀川区の南部、十三 エリア。

下町の名残が残る駅近の高架下に、創業20年「十三すし屋台」という愛され続けた店舗があった。
2021年7月21日、この店が【20年目】の節目を機に一節の幕を閉じることを決意。飲食・寿司業界の新たな可能性を秘めた“スタンド寿司”として心機一転オープンをする。

新しく生まれ変わった店の名は『十三すし場 而季庵(じきあん)』。
今回は新規スタートを決めた中本オーナーのインタビューより、一軒の寿司屋が描く新たな歴史の序章を紹介したい。

  

2021年7月21日「十三すし場 而季庵」がOPEN

駅より徒歩3分。交差点を渡って商店街すぐ『十三 すし場 而季庵』にて。

阪急十三駅から徒歩3分。
今年7月21日にグランドオープンを迎える『十三すし場 而季庵』は、“上質な創作寿司をカジュアルに楽しめる”ことをコンセプトとした寿司屋。昔ながらの立ち店のスタイルはそのままに、店舗の外装・内装を大きく方向転換し、新たな客層へアプローチを仕掛けるという。


白壁・ガラス張り、大きな一枚板の扉とシンプルな外観は、昔ながらのレトロな街並みに一味違う雰囲気を漂わせる。この日は待ちに待った内装工事が終わり、中本オーナーが店舗スタッフとともに内覧をする日だ。

新しい店構えに程よい緊張感を感じつつ引き戸を開けると、そこには寿司屋とは思えない、まるでカフェのようなモダンな空間が広がった。

店内はホワイトカラーと木目を基調にグリーンがアクセントになったナチュラルで温かみのある空間。明るいジャズミュージックが流れる、スタイリッシュな内装となっている。
「(寿司+バル)÷2」という表現が近しいだろうか。上質さこそ感じるものの、入ってみると意外にもやわらかな雰囲気と心地よさに、いい意味で度肝を抜かれた。

できたての新しい店舗の奥から登場したのは、今回の依頼者、中本オーナー。27歳より飲食業界に足を踏み入れ40年余。御年68歳になるという。
これまで様々な店舗経営を経験した中本オーナーの中でも、旧店舗・十三すし屋台で経た20年の飲食人生は、多大なるものに違いない。

地元の人々に愛され続けた人気店が生まれ変わったいま。その心境を尋ねてみた。

◆創業20年の人気店を心機一転。その理由とは?

 

旧・十三すし屋台/新・すし場 而季庵オーナー中本様

Q.「どうして店舗を改装しようと思ったのですか?」

「やっぱり、20年目っていうこともあってキリが良いタイミングだったからね。もともと大阪市所有の高架下の耐震工事をするために立ち退きの話があがっていたから、突然の話ではないけれど。あとはコロナが思っていたより長引いたということも、一つのきっかけかな。」

もとよりあがっていた旧店舗の立ち退きの話に加え、ちょうどキリの良い20年目という節目が、リスタートのきっかけになったとのこと。

また、時代とともに変わりゆく飲食業界やコロナの影響に伴う顧客ニーズに合わせて店舗側のハード面も見直していく必要があったと中本オーナーは語る。

 

◆店舗内装のデザインに込められた想い

いままでより「明るい店舗にしたい」と語る中本オーナー。


新店舗『十三 すし場 而季庵』のコンセプトは、前述のとおり“上質な創作寿司をカジュアルに楽しめる”スタンド寿司。予算は6,000円前後とリーズナブルな価格で、職人が握る寿司と逸品、ジャンルに富んだお酒を心ゆくまで味わうことができる。

旧店舗「十三 すし屋台」と比べ、スタンドの“立ち店”という業態は引継ぎつつも大きく変化したのは、その内装デザインだ。かつての昭和らしい貫禄を感じる旧店と比べると、店舗イメージは大きく変換した。なぜ、このようなデザインを希望したのか、オーダーの意図を聞いてみた。

Q.今回はなぜこのような内装を希望されたのですか?

「まず、もっと明るい雰囲気にしたかった。カジュアルに来てもらえるような、そんな寿司屋がつくりたくてね。」

今回、中本オーナーが一番望んでいたことは、【明るい雰囲気の店舗】への改装だった。
もともと十三すし屋台のころから、顧客のターゲット層は30~40代の男女と昔も今も変わらない。

しかし、20年も経てば、訪れる十三の住民の世代が変わってくる。

暖簾をくぐって入る昔ながらの寿司屋を卒業し、カフェバールのような店づくりをすることで、今の世代の人々にとってより親しみやすく、来店しやすい店を作りたいという意図が込められていた。

  

この度、内装デザインを担当した永原デザイナーにも話を聞いてみた。

外観は、もともとブティックだった店舗のフロント枠を生かし、寿司屋でありながらも、カフェやバーのような、モダンでおしゃれな店舗デザインを意識したという。

カラーは、中本オーナーの一番の希望である「明るい雰囲気」を演出できるよう、白と木目を基調に温かみを感じる色合いに。全体的に白色の割合は多いものの、単調でチープな印象にならないよう、あえて色を意識させないバランスにこだわった。

親しみのあるカフェ風の雰囲気を融合させた、ニュースタイルの寿司屋。新しく生まれ変わった店舗を見て、中本オーナーにその感想を聞いてみた。

  

Q.改装してよかったと感じることはなんですか?

「すべてはこれから。よかったことは、希望通り、明るいお店になったことかな。」

同じ土地・同じ客層で店舗を運営しようとも、時代とともに顧客の世代は変わっていく。だからこそ、いまの若者たちがより入りやすい店舗を構えたいという目的の達成は、新たな挑戦に向けた確実な第一歩となったに違いない。

「店舗の形が整えば、特定の人がいなくとも、店のことは店自身が語ってくれる。どんなお店だ、こういうお客さんに来てほしい、なんて長々とした説明は要らなくなる。」

店舗ブランディングの強化により、店側の提案する商品・サービスを素直に楽しみたいという顧客の集客効果も期待できる。内装コンセプトの明確化が、来店客を店側のターゲット層に合わせてセグメントできることにも、店舗内装の意味があるのではないかと、中本オーナーは語る。

  

◆新店舗 『十三すし場 而季庵』で描くこれからの未来

 

最後に、今後のビジョンについていまの想いを聞いてみた。

Q.今後の新店舗に懸ける目標や夢をお聞かせください。

「これをベースに寿司業態の新しいビジネスモデルを作りたい。守るところは守って、攻めるとこは攻める。淀川の橋を渡ってわざわざ十三に足を運んでくれる人が増えたらいいなと思いますね。それから、これを機に内部の労働環境も整えていきたいと思う。」

 

近年の世情では、年に何千店のペースで立ち店が閉店されており、寿司業態の未来は非常に厳しい状況だといえる。そんな中、見習いとして一から修行させ、ノウハウを伝承し、独立開業するといった労働スタイルでは、いずれ限界がくるかもしれない。

そのような懸念を解消するために、新しい寿司屋のビジネスモデルを確立させ、粗利構成の見直し・よりキャリアアップしやすい環境を整え、次世代のための土台づくりをすることが中本オーナーの描くビジョンの一つだ。

  

「いままでの寿司屋は、一部の人間が説明をしないとその“店となり”がお客様に伝わりきらなかった。今後はこの店舗が道標となって、どんなスタッフでもコンセプトに即したサービスの提供ができるようになると思う。」

 

途絶えさせないために、変化していく。

 

中本オーナーが決意した店舗内装は、飲食業界の明るい未来をつくる一掛けとなるだろう。

昔ながらの古き良き十三の街に、きらりと光る新たな価値。

今後の新しい歴史の幕開けに「楽しみだ」と、目を輝かせるオーナーの表情が印象的だった。

  

 

◆店舗情報

店舗名:十三すし場 而季庵

住所:大阪市淀川区十三本町1-11-15 1階

坪数:16坪

工期:40日

電話番号:06-6390-0639

公式サイト:https://www.sushiyatai.jp/

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